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笛吹童児
編集者、サラリーマンに送る『赤ペン放浪記 編集屋一代』出版のご案内
作成日時 : 2008/09/05 10:29
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笛吹童児です。このたび、『赤ペン放浪記 編集屋一代』を自費出版しました。ぜひご一読下さい。
38年前、自らの怠慢で夢だった高校教師への道を諦めた角倉龍一(かどくら・りゅういち)は、中途半端な気持ちのままサラリーマン社会に飛び込んだ。職種など何でもよかった。そして、大学の恩師の紹介でたまたま就職したのが都内神田の出版社で、たまたま配属された先が書籍の編集部だった。しかし、龍一はここで本作りの魅力にとり憑かれ、以後36年を紆余曲折を経ながら編集一筋に歩むことになる。
色んな事があった。最初の出版社勤務は16年。中堅社員となり、「さあ、これから…」というとき、出版界は混迷の時代に入り、雑誌・書籍の売り上げは激減した。打開策を見出せないまま、社は迷走を続けた。経営トップの朝令暮改と愚行が続いた。そんなトップの懐刀を自認し、仕事は二の次で社内を暗躍する「虎の威を借る狐」が現れた。レベルの低い、醜い出世争いが繰り広げられた。上司の机の引き出しで眠り続けた龍一の企画書。「どうなっているんですか?」と問い詰めた。「上の決定だ」と上司は逃げた。「いったい、どうなっているんだ、この会社は?」怒りの中での選択肢は、引くに引けない退職届となった。
退職後はフリーの編集請負への転職。15年間頑張ったが、バブル崩壊による仕事の激減からの生活苦。角倉龍一は、友人・家族に迷惑をかけ、自らも堕ちて行った。
そして二度目の出版社勤務は、まさに蜘蛛の糸だった。しかし、ここでの5年半は、まさに波乱万丈の歳月だった。入社2ヶ月後に先輩編集長が急死。編集長の大役が回ってきた。未知の分野での雑誌作りに加え、編集長としての重圧・苦労もあったが、それでも充実した日々を送ることができた。そして、編集者の命とも言える赤ペンを握り、十分幸せだった。しかし幸せは、ある日突然不幸と入れ替わる。入社半年後に絶体絶命の癌宣告。食道癌だった。まだ死にたくない。絶望の淵をさまよいながらも、手術を受けた。幸い、命を長らえることができたが、術後のリハビリは辛く苦しいものだった。体力は全盛時の50%程度に回復が限界で、後遺症に悩まされる日々が続いた。それでも、家族と仕事が「生きる力」を与えてくれた。不幸は幸せに転じたかに思えた。
二度目の出版社は、出版界における名血の同族会社だった。ある時を境に、一族の醜い利権争いが繰り広げられ、否応なしに龍一もその渦中に身を置かざるをえなくなった。若い女性社長が更迭され、オーナーである80を過ぎた女社長が復帰した。この老社長は、龍一に「私利私欲」という言葉を思い出させた。高齢ゆえの物忘れなら許せた。だが、そうではなかった。老社長の読者を無視した雑誌作り、虚言と奇奇怪怪な言動が続いた。嘘と裏切りの中で…。
以下に『赤ペン放浪記』の一部を紹介します。10日ごとに更新しますので、ぜひ読んで下さい。なお、本書は自費出版のため、書店では購入できません。
第2章 生と死と ●絶体絶命
■三度目の正直
思えば、若い頃からずいぶん無茶をしてきた。体力には自信があったが、酒にタバコ、加えて仕事や人間関係でのストレス。いつしか内臓、とりわけ十二指腸と胃を傷め続け、二十代後半からは胃薬が手放せなくなっていた。胃の痛みを一時酒で麻痺させたこともあった。不摂生とストレスから十二指腸が破れて出血、二度の入院を強いられた。三十代半ばと四十一歳のときだった。(中略)
幸い二度の入院は、安静と投薬で済んだ。しかし、医師から「気をつけなければ、いずれ癌になりますよ」と言われていた。その注意を忘れたわけではないが、ここ数年の龍一には身体をいたわる余裕などなかった。
「…癌ですか?」声が震えていた。
「助かりますか?」は恐くて聞くことができなかった。
「癌ですか?」に女医は小さくうなずいた。
目の前が真っ暗になった。いや、今風に言うなら「頭が真っ白になった」が正解かも知れない。痺れるような、震えるような寒さが全身を襲った。膝が小刻みに震えた。思考力は「死考力」に置き換えられた。
女医の説明を上の空で聞き、それでも後日、紹介状と診断書をもらい大学病院へ行くことを約束して健保(健康保険組合)を出た。足もとがおぼつかない。はたから見たら、夢遊病者のようであったろう。足は、会社とは反対方向の神田明神へ向かっていた。そこは出版健保からは十分足らずの距離にある。
神田明神は病気平癒のご利益があるとされ、龍一は過去に二度、大切な人の「命乞い」に来たことがある。一度目は末期癌だった父の、二度目は世話になった先輩の母上(やはり末期癌だった)の病気平癒を祈願した。あのときは神妙に手を合せ、ワラをもつかむ思いで祈った。だが、父も先輩の母上も黄泉の国に旅立った。
これまでの龍一の行いを考えれば、神頼みは虫のよい話であった。それゆえ、この日の龍一は神前に立っても命乞いはせず、じっと前を見据えただけだった。ここに来たのは、考える場所と時間が欲しかったからだ。
神殿に続く石段に腰を下ろした。冷静になろうとしたが、気持ちの整理がつかない。まだ春浅い三月下旬。冷たい風と冷えた石段がほんの少しだけ思考力を取り戻させてくれた。静かに目を閉じた。
「お父さん、どうするの?」寂しげな妻の顔が浮かぶ。今にも泣き出しそうな二人の息子の顔も浮かぶ。「じぃじ、じぃじ」と甘える二歳の孫には、まだ何事か分からないだろう。やっとできた娘(長男の嫁)は何を思うだろうか。そして、田舎の母や兄には何と報告すればよいだろうか。(つづく)
『赤ペン放浪記』 四六判上製本 226ページ
購入方法
ハガキ又はメールでお願いします。
住 所 埼玉県志木市上宗岡4-1-3 角田博次
メールアドレス
huehukidoji@mtc.mediatti.net
定 価 1,400円 (税込)
送 料 290円
合計1,690円を本書到着後、下記までお振込み下さい。
ゆうちょ銀行(郵便局)総合口座
10390-27047331 ツノダヒロツグ
<出版社 書籍編集担当者 様>
本書は、平成20年8月に自費出版したものです。もし、本書に興味がおありでしたら、メールなり、お手紙にてご連絡いただければ1部お送りさせていただきます。再度出版社からの発行を希望しております。
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